英語の辞書を引くと、単語の横に見慣れない記号が書いてあるのを目にしたことがあるのではないでしょうか。これが発音記号(IPA:International Phonetic Alphabet)です。
「カタカナ読みでいいじゃん」と思うかもしれませんが、それだと英語の発音は絶対に上達しません。日本語にない音が英語にはたくさんあるからです。発音記号を読めるようになると、辞書を引くだけで正しい発音がわかるようになり、英語学習の効率が劇的に上がります。
実は発音記号は覚える数がそんなに多くありません。母音が約20個、子音が約24個、合計44個くらいを覚えればOKです。この記事では、発音記号の読み方を一覧表付きでわかりやすく解説していきます。

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母音の発音記号一覧と読み方
英語の母音は日本語の「あいうえお」の5つと違って、かなり数が多いです。ここが日本人がつまずくポイントです。
短母音(Short Vowels)
/ɪ/ ── 「イ」に近いが短く軽い
例:sit /sɪt/、big /bɪɡ/
コツ:日本語の「イ」より口をリラックスさせて短く発音します。「エ」に近い「イ」のイメージです。
/e/ (または /ɛ/) ── 「エ」
例:bed /bed/、pen /pen/
コツ:日本語の「エ」とほぼ同じです。口を少し横に開きます。
/ae/ ── 「ア」と「エ」の中間
例:cat /kaet/、bad /baed/
コツ:日本人が最も苦手な音の一つです。「ア」と言いながら口を横に引っ張る感じで、「エァ」に近い音です。
この先も記号と音の対応が続きます。文字だけで追うのがきつくなってきたら、音声つきで1記号ずつ解説した発音記号の本を横に置くと、耳で確かめながら読み進められます。
/ʌ/ ── 短い「ア」
例:cup /kʌp/、but /bʌt/
コツ:日本語の「ア」に近いですが、もっと短く口をあまり開きません。
/ɒ/ (イギリス英語) / /ɑː/ (アメリカ英語) ── 「オ」に近い「ア」
例:hot /hɒt/(英)、/hɑːt/(米)
コツ:口を大きく開けて「アー」と言います。アメリカ英語だと長めに発音します。
/ʊ/ ── 短い「ウ」
例:book /bʊk/、put /pʊt/
コツ:日本語の「ウ」より唇を丸くして短く発音します。
/ə/ ── シュワー(あいまい母音)
例:about /əˈbaʊt/、banana /bəˈnaenə/
コツ:英語で最も頻出する音です。力を抜いた「ア」で、ほとんどの弱音節はこの音になります。
長母音(Long Vowels)
/iː/ ── 長い「イー」
例:see /siː/、eat /iːt/
コツ:口を横に引いて「イー」と長く発音します。
/ɑː/ ── 長い「アー」
例:car /kɑːr/、far /fɑːr/
コツ:口を大きく開けて「アー」と発音します。
/ɔː/ ── 長い「オー」
例:door /dɔːr/、law /lɔː/
コツ:唇を丸くして「オー」と発音します。
/uː/ ── 長い「ウー」
例:food /fuːd/、blue /bluː/
コツ:唇を突き出して「ウー」と発音します。
/ɜː/ ── 「アー」に近い音
例:bird /bɜːrd/、learn /lɜːrn/
コツ:口をあまり開けずに「アー」と発音します。日本語にはない音なので要練習です。
「日本語にない音」は、記号を覚えるだけでは出せるようになりません。舌や唇の断面図で口の形を示した発音の本があると、練習の指針が具体的になります。
二重母音(Diphthongs)
/eɪ/ ── 「エイ」
例:day /deɪ/、make /meɪk/
/aɪ/ ── 「アイ」
例:time /taɪm/、buy /baɪ/
/ɔɪ/ ── 「オイ」
例:boy /bɔɪ/、join /dʒɔɪn/
/aʊ/ ── 「アウ」
例:how /haʊ/、out /aʊt/
/əʊ/ (英) / /oʊ/ (米) ── 「オウ」
例:go /ɡəʊ/、home /hoʊm/
/ɪə/ ── 「イア」
例:ear /ɪər/、near /nɪər/
/eə/ ── 「エア」
例:air /eər/、care /keər/
/ʊə/ ── 「ウア」
例:tour /tʊər/、pure /pjʊər/

子音の発音記号一覧と読み方
子音は比較的日本語に近い音が多いですが、いくつか要注意ポイントがあります。
日本語にない要注意の子音
/θ/ ── “th”の無声音
例:think /θɪŋk/、bath /baeθ/
コツ:舌先を上の歯に軽く当てて息を出します。日本人が「サ行」で代用しがちですが、まったく違う音です。
/ð/ ── “th”の有声音
例:this /ðɪs/、mother /ˈmʌðər/
コツ:/θ/と同じ口の形で声を出します。振動を感じるのがポイントです。
/r/ ── 英語のR
例:run /rʌn/、red /red/
コツ:舌先をどこにも触れさせません。舌を奥に引きながら「ゥラ」のように発音します。日本語の「ら行」とはまったく違う音です。
/l/ ── 英語のL
例:like /laɪk/、look /lʊk/
コツ:舌先を上の歯茎にしっかりつけます。RとLの違いは日本人最大の課題です。
/v/ ── 下唇を噛む「ヴ」
例:very /ˈveri/、voice /vɔɪs/
コツ:上の歯で下唇を軽く噛んで声を出します。「ブ」ではありません。
/f/ ── 下唇を噛む「フ」
例:fun /fʌn/、life /laɪf/
コツ:/v/と同じ口の形で息だけ出します(無声音)。
/ŋ/ ── 鼻に抜ける「ン」
例:sing /sɪŋ/、king /kɪŋ/
コツ:舌の奥を上あごにつけて鼻から息を抜きます。”ng”の音です。
/ʃ/ ── 「シュ」
例:she /ʃiː/、ship /ʃɪp/
コツ:唇を丸くして「シュー」と息を出します。
/ʒ/ ── 「ジュ」
例:vision /ˈvɪʒən/、measure /ˈmeʒər/
コツ:/ʃ/の有声音です。声を出しながら「ジュ」と発音します。
/tʃ/ ── 「チ」
例:church /tʃɜːrtʃ/、watch /wɒtʃ/
/dʒ/ ── 「ヂ」「ジ」
例:job /dʒɒb/、judge /dʒʌdʒ/
その他の子音(日本語に近いもの)
/p/ /b/ /t/ /d/ /k/ /ɡ/ /s/ /z/ /m/ /n/ /h/ /w/ /j/ は日本語に似た音があるので比較的簡単です。ただし /p/ /t/ /k/ は英語では息を強く吐き出す(帯気音)のがポイントです。
文字と音の対応をまとめて整理したいなら、フォニックスの教材が近道です。発音記号が「辞書を読むための道具」なのに対し、フォニックスは「つづりから音を推測する道具」なので、両方あると補い合います。
発音記号の読み方のコツ
アクセント記号を見逃すな
発音記号の中に「ˈ」(ストレスマーク)が入っていることがあります。これはその直後の音節を強く読むという意味です。
例:banana /bəˈnaenə/
→ 真ん中の「ナ」にアクセントがあります。「バナーナ」のような感じです。
「ˌ」は第二アクセント(やや強く読む)です。
例:information /ˌɪnfərˈmeɪʃən/
→ メインは「メイ」、サブが「イン」です。
シュワー /ə/ を制する者が英語を制す
/ə/ は英語で最も多く出てくる母音です。弱い音節はほぼ全部これになります。日本人は全部の母音をハッキリ発音しがちですが、英語は強弱のメリハリが非常に大事です。弱い部分は /ə/ で軽く流すのがネイティブっぽく聞こえるコツです。
音の連結・脱落にも注目
実際の会話では、音がつながったり消えたりします。例えば “want to” が “wanna” になるのも音の連結・脱落の一種です。発音記号を覚えたら、次はこういった音声変化にも意識を向けましょう。

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発音記号を覚えるための練習法
1. 辞書を引くたびに発音記号を確認する
新しい単語を覚えるとき、意味だけでなく発音記号も必ずチェックしましょう。最初は面倒ですが、慣れると一瞬で読めるようになります。
2. 音声付き辞書を活用する
Longman Dictionary of Contemporary English(LDOCE)やOxford Learner’s Dictionariesは、発音記号と音声の両方が確認できるので非常に便利です。
これらの学習者向け英英辞典は書籍版も出ています。紙で引くと前後の見出し語も目に入るので、発音記号に触れる回数そのものが増えるという利点があります。
3. 最小対立語(ミニマルペア)で練習する
似た音の単語を対比して練習するのが効果的です。
- /r/ vs /l/:right / light
- /ae/ vs /ʌ/:bat / but
- /θ/ vs /s/:think / sink
- /b/ vs /v/:berry / very
- /iː/ vs /ɪ/:seat / sit
4. 鏡を見ながら口の形を確認する
特に /θ/ /ð/ /r/ /l/ /v/ /f/ は口の形が重要です。鏡を見ながら舌や唇の位置を意識して練習しましょう。
洗面所まで行くのが面倒で続かない、という声は少なくありません。角度を変えられる卓上ミラーを机に置いておくと、辞書を引いたその場で口の形を確認できます。
5. YouTubeの発音解説動画を見る
Rachel’s EnglishというYouTubeチャンネルは、口の中の動きをアニメーションで見せてくれるので非常にわかりやすいです。発音記号ごとに詳しい解説がありますので、ぜひチェックしてみてください。
よくある間違いと注意点
カタカナに頼らない
「apple = アップル」のようなカタカナ読みは今すぐ卒業しましょう。正しくは /ˈaepəl/ です。「ア」ではなく /ae/(「エァ」に近い音)です。
アメリカ英語とイギリス英語で違う
辞書によってはアメリカ発音とイギリス発音が併記されています。どちらかに統一して覚えるのがおすすめです。日本の英語教育はアメリカ英語ベースが多い傾向にあります。
完璧を目指しすぎない
ネイティブとまったく同じ発音でなくても、通じればOKです。大事なのは「相手に伝わる発音」であって、完璧なネイティブ発音ではありません。まずは紛らわしい音(R/L、th、v/b)を区別できるようになることを目標にしましょう。
- /ae/ ── 日本語にない母音の代表
- /ə/ ── 最頻出の母音(シュワー)
- /θ/ /ð/ ── thの音
- /r/ /l/ ── 日本人最大の課題
- /v/ /f/ ── 唇を噛む音
まとめ:発音記号が読めると英語学習が変わる
発音記号は最初はとっつきにくいですが、一度覚えてしまえば一生使えるとても効果的なツールです。
- 母音約20個、子音約24個を覚えればOK
- 特に /ae/ /ə/ /θ/ /ð/ /r/ /l/ は重点的に練習
- 辞書を引くたびに発音記号を確認する習慣をつける
- 音声付き辞書やYouTubeを活用して耳と口で覚える
発音記号が読めるようになると、辞書を引くのが楽しくなりますし、知らない単語でも自信を持って発音できるようになります。英語学習の土台として、ぜひマスターしてみてください。
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